コロナワクチンを巡る特許訴訟について
この度、米国のモデルナ社が、米国のファイザー社とドイツのビオンテック社に対して、モデルナ社が開発したコロナワクチンについてのmRNA関連技術の特許を元に、特許侵害訴訟を起こしました。
このことについて、先日以下のクラブハウスで少しお話をさせていただいたので、こちらのブログにも簡単にこの訴訟についての内容をまとめてみたいと思います。
アメリカ知財と法務 on Clubhouse
まず、モデルナ社は自身の有する以下の3つの米国特許の権利について、ファイザー社らが販売しているコロナウイルスワクチン、Comirnaty®において侵害されていると訴えています。
- 10,898,574 (the “’574 patent”): Delivery and formulation of engineered nucleic acids
- 10,702,600 (the “’600 patent”) : Betacolonavirus mRNA vaccine
- 10,933,127 (the “’127 patent”) : Betacolonavirus mRNA vaccine
それぞれの特許のクレーム1の概要は以下の通りです。
対象の細胞内で目的のポリペプチドを産生する方法(修飾されたメッセンジャー RNA (mmRNA) を含む医薬組成物を対象に投与することを含み、mmRNAは目的のポリペプチドをコードする翻訳可能領域、修飾ヌクレオシド 1-メチル-シュードウリジンを含み、有効量のmmRNAを含む医薬組成物は、非修飾のmRNAを含んだ医薬組成物と比較して、ポリペプチドの生成を増やし細胞内の免疫反応を減少させる)
‘574 patentのclaim1の日本語訳
脂質ナノ粒子中に製剤化されたベータコロナウイルス(BetaCoV)Sタンパク質またはSタンパク質サブユニットをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を含む組成物。
‘600 patentのclaim1の日本語訳
対象において免疫応答を誘導するのに有効な量で脂質ナノ粒子中に処方されたベータコロナウイルス(BetaCoV)Sタンパク質またはSタンパク質サブユニットをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を対象に投与することを含む方法。 BetaCoV S タンパク質または S タンパク質サブユニットに対して、脂質ナノ粒子は 20 ~ 60 mol % のイオン化可能なカチオン性脂質、5 ~ 25 mol % の中性脂質、25 ~ 55 mol % のコレステロール、および 0.5 ~ 15 mol % の PEG 修飾脂質を含む。
‘127 patentのclaim1の日本語訳
訴状は以下から読むことができます。
Moderna v. Pfizer, 22-cv-11378, US District Court, District of Massachusetts.
訴状の中でモデルナ社は、あくまで損害賠償請求は2022年3月8日以降の特許侵害行為に対して行うと述べており、また、米国のファイザー社とドイツのビオンテック社が低所得の国から得たワクチンの売上については対象に入れないとも述べています。両社は故意にモデルナ社の特許権を侵害しているとして、モデルナ社は陪審員によるトライアルを求めています。
なお、この訴訟に関する情報については今後も継続的に追っていきたいと思っているので、できる範囲で、この訴訟についてのアップデートをしていきたいとも考えております。